こんにちは。公認会計士の川口宏之です。
夕刊フジで毎週連載している「図解で分かる決算書の仕組み」がwebにアップされました。
https://www.zakzak.co.jp/smp/eco/news/180606/eco1806060005-s1.html
今回、分析した企業は「メルカリ」です。
紙面の都合により、書きたくても書ききれなかったことを、
ここでお伝えしたいと思います。
直近の本決算(2017年6月期)を見ると大赤字です。
(ちなみに、直前の第3四半期(2017年7月~2018年3月)も大赤字です。)
「赤字でも上場できるの?」
「この会社大丈夫なの?」
と不安になる方もいらっしゃるかも知れませんが、
全く問題ありません。
なぜなら、赤字の主たる要因が多額の広告宣伝費だからです。
広告宣伝費はコントロール可能なコスト、
つまり広告出稿を抑制すれば、いつでも黒字できるわけです。
2017年9月に上場したマネーフォワードも、
メルカリと同様、赤字上場でした。
ウェブサービスを運営する会社の強みですね。
一般的なセオリーからすると、
「赤字=稼げてないダメな会社」と判断しがちになりますが、
その会社のビジネスモデルをきちんと踏まえないと、
本質を見失ってしまいます。
ちなみに、記事ではメルカリの連結財務諸表を分析対象としましたが、
メルカリの単体財務諸表を見ると、なんと黒字です。
連結財務諸表には、メルカリの海外子会社(米国や欧州)も合算して含まれます。
単体財務諸表は、国内事業のみ。
ここから推測できることは、
国内ではメルカリは概ね浸透してきており、
広告宣伝の手を緩めても大丈夫になってきたが、
その一方で、認知度がまだ低い海外で、
大規模に広告宣伝コストを費やしているのではないか?
ということ。
メルカリCEOの山田進太郎氏が、
「創業者からの手紙」をHPにアップしていますが、
ここに、海外投資を大胆に行うことが書かれています。
メルカリは、上場時の株式発行で500億円ものキャッシュを手に入れる予定です。
直近(2018年3月末)のメルカリの総資産額が602億円ですから、
資産規模が約2倍になります。
また、直近(2018年3月末)時点で、すでに現預金残高が535億円を保有しているため、
上場したら1000億円を超える現預金残高になります。
そして、この巨額のキャッシュを何に使うのか?
おそらく海外展開のための広告宣伝がほとんどでしょうね。
大胆に使って一気にフリマ市場のシェアを奪いたいところでしょう。
日本初のウェブサービスが海外で成功する事例はほとんどないので、
メルカリには本当に期待したいところです。