こんにちは。公認会計士の川口宏之です。
久々のブログ更新です。
本日は、電通のニュースについて、私なりの見解と未来予想図をお話ししたいと思います。
11月11日に、日経新聞でこんな記事が掲載され、話題になりました。
電通、社員230人を個人事業主に 新規事業創出ねらう
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO66103760R11C20A1916M00/
さらに、11月26日号のデイリー新潮に、その後の反応についての記事が載りました。
電通の“社員の個人事業主化”に応募殺到 社員の反応は?
https://www.dailyshincho.jp/article/2020/11290556/
これに対し、
「体のいいリストラだ!」
「従業員を酷使するつもりだ!」
と憤慨している方が多数いるようです。
もちろん、正社員から業務委託契約に切り替われば、
労基法の範疇から外れるので、
労働時間や休日に関して制限はなくなります。
「強制的に社員を酷使し、使えなくなったら首を切る」
そんな状況を思い浮かべているのかもしれません。
もちろん、そのようなマイナスの側面もありますが、
プラスの側面も大いに存在します。
ここではあえて、プラスの側面について述べたいと思います。
実は私も、
前職のコンサルティング会社を退職するとき、
今回の電通のような形式をとりました。
正社員から業務委託契約への切り替えです。
正社員時代に担当していた案件の一部を、
業務委託として引き受けています。
この仕事は今も続いています。
同じ担当者の方がクライアントも前職の会社も安心するし、
私としても独立直後の不安定な時期に、安定収入が確保できるので、
いわば、三方良しです。
私と同じように、
会社を辞めた後も、
前職と業務委託契約を結んで仕事を継続している人は、
私の業界では意外に多いんです。
もちろん、業務委託契約なので、
突然、契約を切られる恐れがあります。
でも、それは逆もしかりです。
業務内容と報酬が見合ってなければ、
こちらから契約を切ることもできます。
嫌な仕事は基本的にお断りします。
お互いが高いプロ意識と緊張感をもって、
業務を遂行することが求められます。
だから、仕事のクオリティとスピードは高い状態を常にキープしなければなりません。
極論を言えば、
これが従業員だったら、多少、手を抜いても許されてしまいます。
日本の従業員は労働基準法でガチガチに守られているので、
そう簡単に減給や解雇ができないからです。
昇給とか昇進はできないかもしれませんが、
就業規則さえ守っていれば、一定のお給料は必ずもらえます。
全部が全部とは言いませんが、
多くの会社が今回の電通のような施策を行ったら、
日本企業の生産性は劇的に上がるんじゃないかと思っています。
アメリカでは従業員を簡単にレイオフすることができます。
だから従業員は会社から首を切られないように、
常に高いパフォーマンスを発揮します。
そのための自己研鑽も怠りません。
でも、日本企業の場合、簡単に首を切れません。
優秀じゃない従業員も雇用し続けなければなりません。
固定費を下げることが困難な環境下で、
外資系企業と戦わなければならないのです。
これが大きな足かせになっている会社は非常に多いです。
そもそも会社と労働者の関係って、上下の関係である必要はないですよね。
労働者は会社に労働力を提供し、会社はその対価をして金銭を支払う。
お金とサービスの等価交換です。
なぜか、
「お金を払う方が偉い」という風潮がありますよね。
もともとは物々交換だったものが、
金銭を媒介するようになっただけで、
どちらが偉いとかの話ではありません。
しかし、労働者は法律で守られている分、
会社の言いなりにならなければならない、
という、変な関係になっている気がしています。
その点、会社と個人事業主との業務委託契約であれば、
個人事業主は別に労働基準法で守られてないので、
会社の言いなりになる必要はありません。
業務と報酬の、あるべき等価交換が生まれると思います。
契約内容に従って業務を履行するという関係で、
報酬があまりにも低ければ、個人事業主は契約を断り、
業務量が膨大になれば追加の報酬を請求する。
多くの方が想像するように、
電通が元従業員である個人事業主に対し、
あまりにも無茶な要求を押し付け続けていたら、
優秀な個人事業主は電通から離れていきます。
そうなってしまっては電通も仕事が回らなくなるため、
個人事業主が納得してくれる報酬で業務を依頼するでしょう。
個人事業主になれば、
電通以外の仕事も自由にでき、
仕事ができる人からすれば、
会社員の枠に縛られずに様々な仕事ができます。
会社命令で嫌な仕事を押し付けられそうになっても、
個人事業主であれば断ってしまえばいいのです。
もちろん、
電通からしか仕事を受けてない個人事業主だったら、
食い扶持がなくなってしまうので、
あらかじめ電通依存度を下げておかなければなりません。
今回の電通の件は、
希望者のみ業務委託契約に切り替えるということなので、
おそらく、自分で仕事を取れる優秀な社員は個人事業主になることでしょう。
実際、対象者2,800人のうち、230人が応募したようです。
全体の10%弱。
応募したのは、おそらく、
トップ10%に入る優秀な社員の方たちだと思われます。
今回の電通の施策が他の会社にも広まれば、
優秀なビジネスパーソンはどんどん独立し、
優秀じゃないビジネスパーソンは会社にしがみつく。
会社としては、優秀な個人事業主に仕事を依頼したいので、
高い報酬と面白い仕事を優先的に割り当て、
大して面白くもない単調な仕事を正社員に割り当てる。
近い将来、そんな世の中になっているかもしれません。
そのとき、あなたは、どっち側にいますか?